壊れにくいメンタルは
気合ではなく脳の使い方で決まります。
脳の性質を把握していないと、合わない脳の使い方をしていることにも気づくことができません。
脳のメカニズムを見ながら「メンタルを壊しにくい人」に共通する脳の使い方を見ていきます。
扁桃体:不安の意味解釈が違う
危険や不確実性を察知すると、扁桃体は、思考より先に反応し不安、緊張、恐怖などの感情を起こします。そのため不安を感じるのは、脳が正常に働いているという正常な状態だということです。
逆に扁桃体がしっかりと働かない人は恐怖を感じることができず、危険な判断をしてしまいやすくなります。
私たちは「不安がない」「怖さを感じない」「常に楽観的」な人をメンタルが強い人だと判断しがちです。しかし、実際には危険を察知できない人でもあるのです。
だから、大切なのは「不安を感じる」けれど、「振り回されない」でいることです。
では、どうすればいいのか?
不安の解釈・再評価をすることで、扁桃体を落ち着かせることです。
メンタルを壊しやすい人は、以下のように不安を解釈しがちです。
- 「自分はダメだ」
- 「失敗したら終わりだ」
- 「この不安は消さなければならない」
その一方で、壊れにくい人は、不安をこう解釈します。
- 「これは危険信号だ」
- 「何か調整が必要だ」
- 「準備を促すサインだ」
不安を情報として扱うことで、前頭前野がしっかりと働き出し、落ち着いて思考することができるようになっていきます。
前頭前野を回復させる
扁桃体を落ち着かせながら、次のプロセスを動かしていくことになります。
そこで重要になるのが脳の前頭前野です。以下のような役割を果たしてくれます。
- 状況を整理する
- 感情を調整する
- 行動を選択する
このような司令塔の役割を担っています。
ストレスが強い状態では、前頭前野の機能は低下してしまい、以下のような状態になると研究で示されています。
- 評価が極端になる
- 白黒思考になる
- 衝動的な行動を取りやすくなる
扁桃体が不安を感じ、それが強まっていくと、前頭前野は能力を発揮できず、合理的な判断と行動ができなくなっていくのです。
しかし、メンタルが壊れにくい人は前頭前野の能力を「早く回復させる習慣」を持っています。それは「評価の切り替え」です。
不安を感じて、揺れてしまいます。しかし、即座に評価の見直しを実行していきます。
「なぜ自分は不安を感じているのか?」
「不安を感じていることは拡大していくのか?」
「こういった問題を起こさないようにするためには何が必要なのか?」
「今の状況でできることは何か?」
というように自分の思考の焦点を即座にシフトさせていくことで、前頭前野を再起動させることができます。
外から見ていると「揺れていない」ように見えますが、実際には、内側でこのような作業が行われているのです。
ドーパミンを期待値の設計でコントロールする
ドーパミンは脳内で「行動を促す神経伝達物質」として名を知られるものです。
脳は期待、予測、成功に対してドーパミンを放出し、その結果「やってよかった」という感覚を味わうことになります。
脳科学においてドーパミンは予測と現実のズレ(予測誤差)に反応する物質だと考えられています。
- 期待より良かった→ドーパミンの放出量が上昇→喜び・幸福感
- 期待より悪かった→ドーパミンの放出量が低下→不安・不足感
このような反応をドーパミンは起こすのですが、問題なのは「期待値が高すぎ」て、そのズレがメンタルに打撃を与えることです。
つまり、期待が高すぎると
小さな失敗でも大きなストレスになります。
メンタルが不安定になりやすい人は「期待値が高すぎる」という傾向があります。
「うまくいくはず」「評価されるはず」「失敗しないはず」と、意識的・無意識的に高い期待を抱いてしまいます。その結果、現実がそれに追いつかず大きな打撃を受けてしまうことが起こります。
しかし、メンタルが安定している人は「期待値のバランスが良い」という特徴があります。
「失敗する可能性はある」「うまくいけばラッキー」「まずは試行」というように、ある程度失敗することを織り込んで期待しています。
その結果、多少の挫折や失敗があっても、期待する時点で織り込んでいることになるため、動揺を最小限にして継続することができるのです。
感情の波を外在化する
不安、緊張、恐怖などの感情の波に飲み込まれてしまうと、理性的、合理的に思考することができなくなります。その感情の波を外に出すことが「外在化」です。具体的には紙に書くなど文字にする、人に話すなどの方法があります。
こうすることで自分の抱いている感情を「自分そのもの」として扱う状態から抜け出すことになります。
認知行動療法(CBT)では、不安を感じている状態を「私は不安だ」と表現するのではなく、「私は今、不安を感じている」とします。
言葉の違いはわずかです。しかし、この言葉を話している自分の視点は大きく異なります。前者は「自分の視点」ですが、後者は「外から自分を見ている視点」となっています。
こうすることで、感情を客観的に処理することができるようになり、落ち着いた思考ができるようになります。
脳の使い方をマスターすれば「メンタルが強い人」になれる
今まで見てきた内容をまとめると以下のとおりとなります。
- 不安は敵ではなく、シグナルであり、情報でしかない
- 扁桃体から前頭前野を思考の主体へとシフトさせる
- 期待値を適正なものにすることでドーパミンの発出をコントロールする
- 感情を外在化することで安定させる
以上のように脳のメカニズムを把握し、それにそった思考・行動をすることで、感情は安定感が増し、不安・緊張・恐怖といった波に飲み込まれることが減っていきます。
地味ではあるのですが、いずれも強力な思考の技術です。これを身につけることで、メンタルの強い人になっていくことができます。
