習慣は、環境で9割決まります。
なぜなら、行動の大半は「考える前」に環境によって引き出されるからです。
続けることができる人は、特別に強い意志を持っているわけではありません。
続くことは自動的に行動が呼び起こされる環境に身を置いているのです。
行動を決める2つの環境
人の行動は、
その人の性格そのものよりも、
環境を影響を強く受けます。
心理学、行動科学ではこれを
状況依存性(Situational Dependence)
と呼びます。
人間の行動、記憶、意思決定は
その時の周囲の環境やシチュエーションに強く支配されている
ということです。
続けられる人、習慣化することが得意な人は
行動を引き起こす環境を整えていきます。
続けられな人、習慣にできない人は
行動を止める環境を作ってしまっています。
どのような環境を整備するかは、
良い習慣を身につける上で
非常に重要なことです。
摩擦を操作する
行動とは、「やる気」ではなく「摩擦の総量」で決まります。
行動を引き出す環境とはどのようなものでしょうか?
学習であれば
- 机の上に学習するための教材が出ている
- 教材が開かれた状態で机に置かれている
- すぐに書き込めるようにノートとペンが用意されている
というような状態です。
運動であれば
- 運動用のウェアが自室のベッドの上に用意されている
- 玄関の靴の履きやすい場所に運動シューズが置かれている
となっている状態です。
このような環境では、行動の摩擦が小さく、自然に始まります。
逆に行動を止める環境とはどのようなものでしょうか?
学習であれば
- SNSアプリがスマホの目につく場所に配置されている
- ゲーム機器が自室に入った瞬間に目に入る場所に置かれている
- 机の上が散らかっている
運動であれば
- 運動用のウェアが簡単に出せる場所に置かれていない
- 運動シューズが下駄箱の中に入ったまま
となっている状態です。
行動の摩擦が大きく、開始しにくい状態です。
これが行動を引き止める環境です。
環境設計の5原則
習慣化するためには以下の5つのポイントが重要になります。
- 良い行動の摩擦を減らす
- 悪い行動の摩擦を増やす
- 意志を使わない導線を作る
- デジタル環境の設計
- 物理環境の設計
1. 良い行動の摩擦を減らす
習慣化したい行動の「面倒な要素」を排除していきます。
- 学習:教材とノートを開いた状態にしておく
- 運動:ウェアと運動シューズを前日に準備しておく
- 執筆:文書作成アプリを常に起動しておく
「すぐに着手できる」状態にしておくことが大切です。
そうすることで、「やるかどうかを迷う」ということが減っていきます。
実行率を上げるには、
良い行動の邪魔になる要素を割り出して排除することが重要です。
スタンフォード大学行動デザイン研究所所長の
ブライアン・ジェフリー・フォッグは、
「行動は、簡単になった瞬間に起きる」
と述べています。
2. 悪い行動の摩擦を増やす
良くない習慣を呼び起こすことを減らすには
意図的に行動の邪魔になる摩擦をかけていきます。
- SNSアプリの解除コードを長くする
- SNSアプリを削除する
- スマホを学習する部屋には置かない
- スマホの通知がないように設定する
気をつけたいのは
「やってはいけない」
と自分自身に禁止をすることです。
そうなると逆に
禁止されたことをやりたくなってしまいます。
ですから、
やるのが面倒になるようにしていくことが大切です。
摩擦は行動を減らしてくれますので、
これを利用するわけです。
3. 意志を使わない導線を作る
習慣化する上で大切なのは
意志力に依存しない
ことです。
習慣化がうまい人は、
「やるかどうか」を考えないでいいようにしています。
考える前に、
身体が反応して動き出すような導線を作っています。
導線とは、
ある行動が、自然に次の行動を呼び出す流れです。
- 風呂に入る → ストレッチをする → 眠る
- 朝起きる → コーヒーを飲む → 作業
- 帰宅する → トレーニングウェアに着替える → トレーニングをする
学校や仕事に行っていると基本的には
脳の前頭前野は疲弊しています。
それらの環境ではプレッシャーが多く、
判断、決断を迫られて、前頭前野を使いすぎている
からです。
前頭前野が疲弊すると、行動はとまりやすくなります。
そのため「やろう」という意志を使わずに行動できるような
「流れ」を作り出すことが重要です。
では、「流れ」をどのように作るのか?
導線設計では「順番」を重視します。
(1) 必ず起きる行動(例:朝起きる、帰宅する、入浴する、など)
(2) 習慣にしたい行動(例:作業する、運動する、ストレッチする、など)
(3) 小さな報酬(例:チェックリストを消す、カレンダーに印をつける、など)
順番を固定化してしまえば、
習慣ループとして定着しやすくなります。
そして、一度、定着してしまえば、習慣として自動化します。
意志力に頼る必要のない流れを作ることが重要です。
4. デジタル環境の設計
現代社会において、
習慣を壊す、悪い習慣を身に着けてしまう最大の要因は
デジタル環境です。
デジタル環境は、最も強力な“行動トリガー”です。
通知はCueとなり、SNSは強い報酬を生み、判断回数を増やします。
その結果、
前頭前野は疲弊してしまい、
脳は省エネモードに切り替わります。
その結果、決断力、判断力が落ちてしまい、
考えなくてもできる「食べる」「飲む」「寝る」などの
簡単な行動をとりやすくなります。
それを防ぐには
- アプリ通知はオフにする
- ホーム画面の1ページ目は作業、学習、運動アプリで埋める
- 娯楽は摩擦を増やすためフォルダに入れて目に入りにくくする
- 使用時間のロックを設定しておく
現代社会は
デジタル環境が高度に発達しています。
便利になったと同時に、人間に多大な負荷をかける環境にもなってしまいました。
そのため意図的に「デジタル環境の影響を受けにくくするようにすること」がポイントです。
5. 物理環境の設計
自分の身の回りの環境は、行動に大きな影響を与えています。
- 机の配置
- 椅子の座り心地
- 光の明るさ
- 環境音の大きさ
- 視野に入るもの量
- 整頓されているか
行動科学の研究では、
「視界に入るものが行動を呼び起こす」
ことが示されています。
物理環境に
良い習慣を起こす刺激を用意するか、
悪い習慣を起こす刺激があるのか、
ということは習慣化の上で大きな要素です。
学習であれば
- 教材が机の上に置かれて開かれている
- 教材が本棚に置かれていて目につきにくい
明らかに前者のほうが実行率が上昇します。
運動であれば
- ウェアとシューズがいつでもできるように用意されている
- ウェアは収納の奥にあり、シューズは靴箱の中にある
どちらが行動しやすいかは明らかです。
まとめ
- 良い習慣ができるかどうかは環境で9割決まる
- 行動を引き出す環境を作る
- 良い習慣を身につけるには摩擦を減らす
- 悪い習慣を減らすには摩擦を増やす
- 意志力を使わなくていい導線を設計する
- 現代社会ではデジタル環境が習慣のボトルネックに
- 物理環境は習慣の難易度に大きく影響する
今回は環境を設計し、整備することについて見てきました。
次回はこの環境を土台にして
「失敗しないミニマムな成功ループ」
を作る方法を解説します。
このループを作れば、
習慣は意志力の問題ではない
ということがハッキリとわかります。
