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メンタルが壊れにくい人の「行動の設計」

Behavioral Design for Mental Resilience_1
目次

メンタルが壊れにくい人の「行動の設計」

メンタルは「強さ」ではありません。
設計された行動の結果です。
「メンタルが弱い」と感じるとき、多くの人はこう考えます。
「もっと強くならなければいけない」と。
しかし、その考え方自体が少しずれています。
メンタルは、ただ鍛えるものではなく、設計するものだからです。
メンタルが壊れにくい人は、以下の4つを設計しています
・マイクロ成功スパイラル
・環境回避戦略
・成功ループ設計
・リカバリー・プロトコル

(1) マイクロ成功スパイラル

行動科学の研究では、「自分にはできる」という感覚、つまり自己効力感は、「できた」「達成できた」という成功体験の反復によって育つとされています。
メンタルが強い人は「小さな習慣の達成体験→自己効力感の育成・強化→回復力の強化」という三段階のスパイラルを持っています。

① 小さな習慣の達成体験

簡単で、継続しやすい小さな習慣を設定して実行します。

• 朝に短い時間でいいので体操する
• 5分だけ片付けをする
• 1件だけメールを返信する
• 1行だけ日記を書く

これらの習慣は疲れていても実行しやすいものです。実行できないのは意志の問題ではなく、設計の問題です。
一方で、メンタルが安定している人は、「実行しやすいこと」「継続しやすいこと」を習慣として設定しています。これが繰り返されることで、「自分にはできる」という感覚が強化されていきます。

② 自己効力感を育成・強化する

小さな達成感の積み重ねは「自分はやればできる」という感覚が強固になっていきます。これは心理学では「マイクロ・サクセス(Micro-success)」と呼ばれる概念です。
マイクロ・サクセスとは、心理学や行動科学の視点から見ると、「あえて分割した、極めて小さく、確実に達成可能な成功体験」のことです。
小さな習慣を達成することで自己効力感を高めることができます。そしてこのことにより回復力が強化されます。
心理学者のアルバート・バンデューラは「自己効力感(自分にはそれができるという確信)」を育てる最大の要因は、「遂行行動の達成(実際にできたという経験)」であると述べています。

③ 回復力の強化

「自分はやればできる」という感覚が強くなると、自分を否定する思考に落ち込みにくくなります。そして、仮に落ち込んだとしても、回復することが早くなります。
「できる自分」を実感していればしているほど、失敗に強くなり、元の状態に戻ることが容易になります。

◆ 構造と選択

構造:自己効力感が弱いと、失敗後の回復力も弱くなる
選択:達成しやすい小さな習慣を積み重ねる

(2) 環境回避戦略

メンタルを壊してしまうのは、「不安そのもの」だけが原因ではありません。実際にはその人がいる環境のほうが大きな理由であることがほとんどです。

以下のような環境は、心理的なストレス・ダメージが大きくなります。


• 競争を煽る職場
• SNSでの承認圧力
• 完璧を求める文化
• 他者との比較が常態化している環境


社会心理学の研究(Leon Festinger)では、「人は他人と自分を比較せざるをえない生き物だ」とされています。
人間は自然と他人と自分を比較してしまうということです。そうなると精神的なダメージを受けやすい状態に陥りがちです。
「隣の芝生は青く見える」という言葉があるように、自分よりも他人のほうが良く見えることが少なくありません。その結果、「自分には価値がない」「私は何もできない」などの評価に陥ってしまいます。
しかし、メンタルが強い人は、そのような比較が多発するような環境から抜け出すことが、よく見られます。


• 価値観の合わない職場を替える
• 不必要なSNSをやめる
• ネガティブな影響のある人間関係を調整する
• 承認欲求を刺激する環境から距離をとる


一見すると「逃げている」とも見えないこともありません。しかし、これは「環境の影響力が強力である」ことを理解しているからこそできる賢明な行動です。
行動科学の研究では、人は環境から大きな影響を受けるため、「環境調整がもっとも効率的な行動介入」であるとされています。

◆ 構造と選択

構造:人は比較をせざるをえない → ダメージが発生している
選択:比較が発生する環境から離れる

(3) 成功ループ設計

行動科学の基本概念として「習慣のループ(The Habit Loop)」というものがあります。
習慣のループは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちによって発見され、チャールズ・デュヒッグの著書『習慣の力』で広く知られるようになった概念です。
習慣のループは一般的に以下の3つのステップによって定着します。

① きっかけ (Cue)
② ルーチン(Routine)
③ 報酬(Reward)

① きっかけ (Cue)

脳を「自動モード」に切り替えるトリガーです。ある場所に行く、時間になる、感情などが起こると、どの習慣を使うかが指示されます。
例を挙げると、

  • 朝起きたらコーヒー→日記を書く
  • 座席に座ったら→一番簡単なタスクをやる
  • シャワーを浴びる→ストレッチをする

きっかけが明確だと、意志力をほとんど使わずに自動的に行動するようになります。

② ルーチン(Routine)

きっかけ(Cue)によって起動された習慣・行動のことです。このルーチンは軽い行動であるほど成功しやすいです。

  • 30分運動 → 5分運動
  • 1時間の勉強 → 1ページだけ読む
  • 完璧な家事 → 机の上だけ片付ける

などのように、重い行動ではなく、軽くできるような量、時間にすることがポイントです。
行動科学では行動が自動化されるまでに必要な期間は、平均で66日だとされています。やりやすい習慣・行動を続けることで、自動化されるようになります。

③ 報酬(Reward)

脳が「これからも繰り返す価値がある」と判断するための見返り(報酬)です。これは大げさなものである必要はありません。

• チェックリストにチェックをいれる
• カレンダーに印をつける
• 「今日もやった」とつぶやく

小さな報酬ではあるのですが、脳がドーパミンを放出するのを助け、達成感(快楽)を味わうことができます。その結果、続けやすくなり、習慣化することになります。
このような小さな成功ループにより「成功している」「達成している」という感覚を常に維持します。
こうすることで「自分はできる」という感覚が強まり、落ち込みを抑え、回復を早くします。

◆ 構造と選択

構造:行動が習慣化されていないため、毎回意志力に依存してしまう
選択:行動しやすく、継続しやすいことを目標として、繰り返し達成していく

(4) リカバリー・プロトコル

メンタルが強い人は失敗がないわけではありません。失敗後にリカバリーできる方法を持っているのです。
失敗後は当然のことながら落ち込みます。これは脳のメカニズムからしても自然なことです。そのためこの落ち込みへの対応策が必要となります。
メンタルが強い人は、この対応策をしっかりと持っています。

• 10分だけ散歩する
• 失敗を箇条書きにして記録する
• 次に改善する点を1つだけ選ぶ
• 誰かに相談する
• 睡眠を優先する

こうした気分を切り替え、回復方向に向かわせる行動をあらかじめ用意しています。
これらの行動を、気分が沈んだときに実行するよう、事前に決めておくのです。
事前に用意しておけば、メンタルが壊れる前にストップがかかり、回復へと向かうことができます。

◆ 構造と選択

構造:失敗した時にあわてふためいてしまい落ちるだけ落ちてしまう
選択:前もってメンタルを回復方向に向かわせる行動をリストアップしておいて実行する

まとめ

メンタルを強くするには以下のようなポイントが重要です。

• メンタルは「小さな習慣の達成体験→自己効力感の育成・強化→回復力の強化」で強くなる
• 比較を煽るような悪い環境から早く離れる
• 小さな成功ループにより自己効力感を高め回復力を強化している
• 失敗後のリカバリー行動をあらかじめ用意している

意志力や精神力を鍛えること自体が悪いわけではありません。
しかし、より効果的で再現性が高いのは、前もって「壊れにくい行動」を設計しておくことです。
メンタルの安定は、気合いではなく、設計から生まれます。

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