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なぜ習慣は続かないのか?意志力ではなく「脳の回路」が原因

The Science of Failed Habits: Moving Beyond Willpower to Brain Circuitry

続けられる人と続かない人を分けているものは何か?
結論は明確です。


習慣とは、「意志力が強いかどうか?」の問題ではなく、
「脳に自動行動の回路が形成できているかどうか?」の問題です。
続けている人は意思決定を継続的にしているわけではありません。

実際には自動で行動できるように脳に「自動で動く仕組み」を作っているだけです。

目次

習慣は「3つのループ」でできている

行動科学者であるチャールズ・デュビックは、習慣はCue(きっかけ)、Routine(行動)、Reward(報酬)の3つの段階で成り立っていると説明します。

これを習慣ループと呼んでいるのですが、この3つの要素のループを繰り返すことで、習慣として脳に回路が形成されます。

① Cue(きっかけ)

行動を始めるキッカケになるスイッチのことです。

• 朝の光
• コーヒーを飲む
• 決まった時間

このようなものを合図にして行動が始まる。

Cueとは「無意識に行動を呼び出す合図」です。

② Routine(行動)

Cueによって発動する行動そのもののことです。

• 日記を書く
• ブログを更新する
• 勉強をする
• 運動を始める

これらの行動はCueとセットになることでRoutineになります。

③ Reward(報酬)

行動のあとに得られる満足感・達成感・すっきり感など、
脳が「この行動をやってよかった」と判断できることです。

• ○をカレンダーに書く
• チェックリストを消す
• 指を鳴らす

お金を掛ける必要はなく、こうした簡単なことで脳が報酬を感じます。
そうなると「この行動を続けよう」と脳の準備が整っていきます。

そしてこのループを繰り返していくことで、
行動が脳に回路として形成されていきます。

この習慣ループによって、なぜ定着するのか。
その裏側にあるのが「ドーパミンによる学習」です。

「ドーパミン=快楽」という誤解

「ドーパミン = 快楽ホルモン」というものを、聞いたことがあるのではないでしょうか?
しかし、それは脳科学的には正確な認識ではありません。

ドーパミンは脳内で快楽感を与える物質ではありますが、
「予測以上に結果が良かったとき」に反応する物質です。

脳科学者のWolfram Shultzの研究によると、
ドーパミンが最も強く分泌されるのは
「報酬が手に入った」とき
ではなく、
「予想していた結果よりも良かった」とき
です。

例えば、
「少ししか進まないと思っていたのに、予想以上にできた」
と、感じた瞬間、
脳は大量にドーパミンを出し、
「この行動は価値がある」と学習します。

習慣化をするには、このドーパミンを利用することが重要です。
意志力やモチベーションで乗り切ろうとするのではなく、
「予想より少し良かった」という体験を多く積み重ねることが大切です。

なぜ「やる気」は続かないのか

習慣にするには

  • 小さく
  • 繰り返し
  • 予想より少し良い

ということで生じるドーパミンが有効です。

その一方で、
「気合」や「やる気」は、
一度だけ大きく出るドーパミンに過ぎません。

一時的な興奮でしかないため、すぐに失われます。

  • 気合 → 一時的にドーパミンが大きく上昇
  • 脳はすぐにその興奮に適応し、平常値に戻る
  • 再現性が乏しく、学習として定着しない

これがいわゆる三日坊主という現象を生み出してしまう主な原因の一つです。

習慣化するにはドーパミンの出し方が重要になります。

習慣によるドーパミンは「小さな達成の繰り返し」で出るものです。
さらに、それが「予想より少し良い体験」であることも重要となります。

ドーパミンそのものは習慣化に役立つものですが、
構造をしっかりと設計してやらないと
自動的な回路を脳に形成することはできません。

なぜ習慣は「自動化」されるのか

脳の基底核 (Basal Ganglia)は以下のようなものを担当しています。

  • 自動化
  • 繰り返し行動
  • ループ構造

つまり、習慣化に関する内容を基底核が担当しているのです。

基底核が「この行動はループすべきだ」と判断すると、
前頭前野(意志・計画を担当する脳の部位)は
ほとんど介入す必要がなくなります。

つまり、
習慣化されると、「やるかどうか」を考える必要すらなくなります。
これが習慣化の強さです。

現在の社会は情報過多と言える時代になっています。
決断すること、判断することが日常生活に溢れている状態となっています。
この状態では意志力、計画力などを担当する前頭前野は疲弊してしまいます。

しかし、基底核に記録された行動(回路)は

  • 疲れない
  • 何度でも動ける
  • 干渉されにくい

という特徴を持っています。

さらに、前頭前野が疲弊して、
脳が省エネモードに切り替わっても、
キッカケで自動的に行動が呼び起こされます。

そのため、
基底核にできた自動回路による行動は、
意志力とは比較にならないほど強固です。

これが続く人と続かない人の決定的な違いです。

続けられる人が人格者に見える理由

一度決めたことを継続できる人は、

人格者に見えるものです。

  • 意志力が強い
  • 自制心が強い
  • 誘惑に負けない

これらの要素を持っているように見えるため、
「こんなことができるなんて、なんて人格者なんだ」
と思われがちです。

しかし、実際には
「脳に行動を呼び起こす自動回路を形成することができている」
ということです。

脳の基底核に記録された行動は
本人の性格、人格性、人間性とは無関係に動きます。

ですから、継続できる人、習慣化できる人は「淡々としている」ように見えます。
努力をしていないわけではありません。
ただ、「努力をしている」と感じないようになっているのです。

まとめ

  • 習慣とは「意志」ではなく「回路」によって行われる
  • Cue → Routine → Reward のループで行動が習慣となる
  • ドーパミンは「予測以上に良かった」ときに強く反応する
  • 小さな達成の繰り返しが習慣化を生み出している
  • 習慣化できる人が人格者に見えるのは、回路によって行動が安定して再現されるから
  • 基底核に自動回路を刻み込むことで強い習慣を生み出すことができる

次回は、習慣化する上で重要となる「環境」の設計と整備について見ていきます。

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